2016年8月7日日曜日

町おこし失敗例の言及は鴨川市のことだろうね「ガルパン杉山P「アニメにはまちおこしの力なんてない」」

ガルパン杉山P「アニメにはまちおこしの力なんてない」
杉山 でも常盤さんは、「アニメのことはよくわからないけれど、なにか町で面白いことができるなら、ちょっと考えましょうか」と言ってくれたんです。

 わたしから常盤さんには、まず初めに「私どもとしては、町を使わせてください。壊せる町・建物が欲しいんです。ロケハンもしたいんです。僕たちは町のことがわかりませんから、案内をしてくれる方はいませんか?」と話しました。その時点では純粋に制作準備をお手伝いいただくつもりだったのです。

 ミーティングを重ねるなかでも、「この作品はオリジナルなのでヒットするかどうか保証できません。だからあまり商売面で“本気”にならないでください」と話しました。世間一般に“アニメでまちおこし”という言葉が一人歩きしていた状況ではありましたので。舞台になった町にファンが遊びに来てくれることはあるかもしれないけれど、まずそれはヒットしないとありえない話なので。

 対して常磐さんは、「面白い事さえできればいいので、我々は経済効果を求める気はまったくない」「これについてはまずごく小さなプロジェクトチームを組みます。気心が知れていて、失敗したら『ごめんね』って言える範囲からスタートします」と言ってくれました。

 逆にそれでわたしは(彼のことを)信用したんですね。『この人、変わっているけれど、本質をちゃんと分かっているかも』と。

 そのころ2人で言っていたのは、「行政を巻き込むのはホントに最後の最後にしましょう」ということ。行政がトップダウンでやった途端におかしなコトになった例も多いように聞いていましたから。最初の約束事“町を巻き込まない”とはそういうことだったんです。できるだけ大きく“やらない”ことを選択しました。
この記事面白いね。ガルパン町おこし成功の舞台裏がよくわかる。
・そもそもいずれ飽きられるアニメの力なんぞ借りなくても大洗町は元々人気のある観光地だった
・一部の20代、30代男性くらいしか観ない深夜アニメごときが町おこしをする力なんてあるわけがない
・アニメの聖地巡礼はその町に人が来るきっかけでしかなく、実際に人が居着いたり、町のファンが拡大していくのは町の人々の作品ファンへの対応力に他ならない
というところが、記事で説明されてよくわかった。

ちなみに、冒頭の元記事引用部分にあった「行政がトップダウンでやった途端におかしなコトになった例」
というのは、具体的には鴨川市を舞台にした輪廻のラグランジェのことだろうね。失敗例として有名な。
アニメと連携した町おこしの成功事例と失敗事例をまとめてみる
・毎回鴨川アピールをしている割に、海以外街の風景がほとんど出ない
・全話のサブタイトルに鴨川をつけるなど、アピールが露骨過ぎてファンの反感を買った
・地元の名産を登場させろとか、町おこし前提でアニメを作る的な姿勢がファンに嫌われた
と、輪廻のラグランジェに関してはなんともひどいありさまなのだけど、このアニメに関しては、
行政をめちゃくちゃ巻き込んでいたことが、下記を見るとよくわかる。
輪廻 のラグランジェ 鴨川推進委員会 が発足
うわっ、こりゃ相当ガッツリ市と組んでたんだな。この輪廻のラグランジェの失敗事例を踏まえると、
「行政を巻き込むのはホントに最後の最後にしましょう」という強い合意の意図がよくわかるね。

あともう一つ、この発言も印象的だった。
杉山 しかし大洗に行って、実際に商品を手に取ってみるとわかりますが、ほとんどロイヤリティーが乗っていないような金額で商品が販売されています。そんな商売っ気のなさがファンに受け入れられた――つまり『俺たちをカモにしようとしている』と思った途端にファンは一気に離れるんですけれど、逆に「こんな値段でいいの?」という声が多かったんですよ。

 得てして、キャラクターを載せて値段を上げるという商売をしがちじゃないですか。ですが大洗は食べ物も含めてものすごく物価が安い。その上に(ライセンス料が)載っかっても、それこそデザインを変更した包み紙の実費分くらいしか上がってないんです。
大洗の商売っ気のなさは、他の記事でも言及されていたね。
絶対に“狙って”はいけないアニメで町おこし 大洗巡礼後記
 アニメの聖地に人が集まるという話は昨今さほど珍しくもないが、移住者まで出したとなると尋常ではない。「アニメで町おこし」の世にもまれなる成功例として大洗には全国から視察が相次いでいるというが、大洗町商工会の大里明さんは「どうやったんですか、と聞かれると少し困る。狙ってやったわけじゃないから…」と苦笑いする。「まず作品がヒットしないと人は集まらない。来てくれた人が楽しめるような工夫はしたけど、どうやって人を呼ぼうかとか、そんなに考えていませんでした」

 どうも町おこしとは対極にあるような商売っ気のないセリフだが、この“商売っ気のなさ”こそが大洗の魅力だとファンは口をそろえる。ある常連の男性は「他の聖地にも行ったことはあるが、観光地みたいにお金を使ってもらおうとしている感じがあった。それが大洗だと、何も買ってないのに店先で何時間も話ができる。ただただ歓迎してくれているのが伝わるから、すごく居心地がいい」と話す。最近はガルパンに関係なく、大洗に来ることそのものが目的になりつつあるという。町おこしを前面に出さない姿勢がリピーターを生み、作品を超えて町の魅力を知ってもらうきっかけになっているのだ。
ということで、アニメで町おこしをする成功の秘訣は、
・そもそも基本的にアニメで町おこしはできないので狙わないし期待もしない
・アニメで金儲けしようみたいなことは考えず、それがきっかけで来たファンを大事にする
ということになるのではなかろうか。